(6/24)中央道を甲府昭和で降り、夜叉神峠へ向かう。天気は今一つ。曇天の甲府盆地からは、南アルプスの頂は見えない。夜叉神峠駐車場(1,370m)で身支度を整え、本日の宿泊予定地、南御室小屋を目指す。夜叉神峠から少し進んだ夜叉神峠小屋は白峰三山を一望できる場所であるのだが、白峰三山の稜線は完全に雲の中。梅雨だしな、と諦めながら先を進む。深い森の稜線を貫く登山道は、静かで、霧が立ち込めると山深さを一層感じさせる。眺望が望めないため、途中昼食を取って小屋へ直行した。テン場はまだすいていたが、16時には一杯になっていた。テントを張り、一休みして周りの方々と語らいの時を持った。こんな時代だが、山に入るといろいろな人と会話ができる。自然と人の心を開かせてくれる山の環境が私は好きだ。早朝5時に夜叉神峠をスタートしたという方の話を聞くと、ガスっていた今日も実は8時前までは晴れていたのだという。山肌を照らす日光で水蒸気が発生し、雲が出てくるのが8~9時……。まさに先日の集会での講義で聞いた話ではないか。翌朝の出発は5時の計画であったが、薬師岳での御来光に間に合うように、遅くとも3時半には出発と計画変更し、19時には就寝した。
(6/25)翌朝2時半には朝食、身支度を整えテントを撤収する。空に星は見えない。やはり今日も天候は望めないのか?と不安になりつつ、一縷の望みを持って足場をヘッデンで照らし暗闇の中に一歩を踏み出す。御来光は薬師岳で!と励ましあい歩みを進めるが、日の出前の暗がりではペースは上がらない。時間は刻々と迫る。森林限界を超え、岩場を乗り越える。空は赤く染まり、後ろを振り返れば、越えてきた稜線の先に富士の頂が雲海に浮かぶ。最後の急登を登り切り、薬師岳に登頂した。日はまだ昇っていない。甲府盆地を覆い尽くす雲海から幾つかの頂が少しだけ顔を覗かせている。金峰山、国師ヶ岳、奥北千丈岳あたりか。北東に目を向ければ八ヶ岳が見える。やがて、人々が固唾を飲み見守る東の空に射し出でた眩いばかりの日の光は、雲の上を滑るように照らし、雲の波を陰影で際立たせて感動的な瞬間を幻想的に演出する。息を飲む美しさとは正にこの事だ。後ろを振り返ると、白峰三山の山肌が鳳凰三山の山影を映すスクリーンとなっていた。薬師岳を後にし、鳳凰三山最高峰の観音岳を目指す。鳳凰三山の地質は花崗岩だ。このため、特に三座の間は白い砂が広がる。切り立った絶壁の上に続く白い稜線。普段の行き慣れた山の景観と異なる天空の世界はアルプスを歩いている満足感を高め、重いザックで疲れているはずの足を奮い立たせてくれる。頂からは、次なる目的地のオベリスクが、また甲斐駒ヶ岳、アサヨ峰、仙丈ヶ岳、その裏には北アルプスの峰々が広がる。素晴らしいアルプスの景観に感動を覚え、三座の最後、地蔵岳にさらに進む。主稜線から少し外れたオベリスクが迫ってくる。見事な岩の重なりで圧倒される頂だ。山頂標は主稜線と地蔵岳の鞍部にある。地蔵が多く並ぶ鞍部の景観からは子宝を願った人々の強い思いが伝わってくる。地蔵岳で大休止を取り下降点の白鳳峠を目指した。少し雲が上がって来たか?高峰山に到着するころには、すでに白鳳峠の東側の斜面からガスがかかり始めていることが山頂より確認できた。良い時間に縦走できた。高峰山から白鳳峠への下りはかなりの急こう配だ。慎重に足の置き場を選びながら進む。ハイマツに荷物をひっかけながらも、苦労して進み、無事に白鳳峠へ到着した。まだ、9時前であるにもかかわらず、若干のガスがかかっていた。広河原に向けて下山を開始する。ガレ場が続く斜面を浮石に注意しながら進み、樹林帯に入る。今回の山行の核心部はこの樹林帯であった。急こう配なうえに足元が滑りやすい。後半は特に急であり、梯子が連続する区間もあるため、ゆっくり確実にと、安全第一に慎重に下りた。無事に下りきったことに安堵し、夏山山行の幕開けを終えた。 (記 S)
<今後の同山域への計画に対してのアドバイス等>
・鳳凰三山は、南アルプスの東端の尾根のため、日光により雲が湧きやすい。9時前までであれば稜線上での眺望が得られやすい模様。
・白鳳峠登山口-白鳳峠は、かなりの急こう配となっている。特に下部350m区間は著しく急こう配。登りで使うにせよ下りで使うにせよ要注意。
(記 S)
<コースタイム>(6/24) 夜叉神峠登山口(/7:30)-夜叉神峠(8:15/8:20)-高谷山(8:30/8:35)-夜叉神峠(8:45/8:50)-杖立峠(10:00/10:05)-火事場跡(10:45/)-昼食(10:55/11:25)-苺平(11:50/)-南御室小屋泊(12:15/泊)
(6/25) 南御室小屋(/3:10)-砂払岳(4:00/4:10)-薬師岳小屋(4:15)-薬師岳(4:25/4:40)-鳳凰山(5:00/5:15)-鳳凰小屋分岐(5:35)-アカヌケ沢の頭(6:15/6:20)-地蔵ヶ岳(6:25/6:50)-アカヌケ沢の頭(6:55/7:05)-高嶺(7:45/7:50)-白鳳峠(8:30/8:40)-白鳳峠入口(10:20/)-広河原インフォメーションセンター(10:35/10:50)=夜叉神峠(11:30/)
<参加者> 2名