2020年7月30日(木)夜~8月2日(月)(北ア)薬師岳~五色ケ原~室堂 (B1)

投稿者: | 8月 21, 2020

(7/31)昨夜定刻に新宿バスタを出発した3列夜行バスの乗客は僅か7,8人。木曜日出発ではあるものの、コロナ禍の様相を如実に語っている。道路も流れたのか予定より30分も早く富山駅前バス停に到着。例年であれば、富山駅から折立まで運んでくれる直通バスは運行なし。電鉄富山駅から富山地方鉄道で有峰口駅まで移動、駅前から、小型の夏山バスに乗り折立バス停で下車。4年前に降り立った記憶のままのトイレと、想像もしていなかったほどの沢山の車が停まっている駐車場。身支度を整え、「太郎坂」の標識を左に見て出発。間隔を置きながらも、常に前後に人々が歩いている。下山してくる人は口々に「○○日間、山中に居たけど、ずっと雨」「今日からは良いでしょう」と言う。軽装の若者グループ、テント装備のソロ、数人単位の小屋泊者、敏捷なランナー……と例年と変わらぬ顔ぶれ。三角点ベンチも五光岩ベンチで、緩やかな歩きからのクールダウンでのんびりと休憩をとっている様子も同じくである。曇りがちであった為、要所からの遠景は望めなかったが、美しい緑の草原、優しい道、気分高揚の木道を歩き太郎平小屋に到着。小屋前からは、雲の間隙を縫って、黒部五郎岳へ続く稜線と三俣蓮華岳から水晶岳と思しき峰々が見て取れた。(T)

今夏の太郎平小屋 通常、宿泊者を170人までも受け入れるが、この日は完全予約制の50人ほどが宿泊。受付はビニールシートで覆われ、食堂に入る前は、スタッフに手を差し出しシュッシュッと消毒される。座席の間隔も大きく、フェースシールドを着けている配膳スタッフも。深くは尋ねなかったが、今シーズンは「医療診療所は開設せず」の方針をとったとのこと。山岳警備員は駐在していた。

(8/1)5時朝食。今日は薬師岳山頂に立ち、北薬師岳、間山を経て、スゴ乗越小屋に至る稜線展望コースである。小屋の方や小屋に滞在されていた警備隊の方から最新の情報を収集し、いったん出発すれば途中下車ができない縦走をスタートさせるに当たり、準備と心構えを再確認する。青空の下、軽く体を動かしてから出発。歩きやすい木道と石畳を抜けると、様々な色の大小の石がゴロゴロしている登山道となり、気を抜くとすぐバランスが崩れそうになる。通過点である薬師平は「ここだ!」という正確な場所は分からなかったのだが、槍ヶ岳も見える視界のひらけた場所がそれだったのではないかと思われる。薬師岳山荘の手前にある「国指定特別天然記念物薬師岳の圏谷群」の標識がある辺りは展望が素晴らしく、これから登る壮大な薬師岳を拝めるだけではなく、美しい薬師岳カール群を楽しむことができる。薬師岳山頂でゆっくり腹ごしらえをした後、さらに北へ向かって歩き出す。薬師岳から北薬師岳の間と北薬師岳からの下りは大きな岩塊斜面となり歩きづらいが、2,3日前この辺りで事故があったと聞いた。70代女性が、ストックを突き損じて転倒・顔面を強打・出血したとのこと。バランスに気をつけて丁寧に足を運んで岩塊斜面を抜けるとお花畑が始まる。ザラ砂のトラバースもゆっくり慎重に渡り、ネパールのカラフルな5色旗タルチョに飾られたスゴ乗越小屋に到着。私たちの後に着いたパーティーの1人が嘔吐・水分が摂れないという症状を訴え、熱中症と判断され翌日ヘリに救助を頼むこととなった。事故や熱中症を身近に見聞きしたことで、登山の危険性について意識し、あと2日続く縦走に向けて改めて気を引き締めた。小屋ではマスク着用、布団にはシュラフ使用が義務付け。水は無料で分けていただけた。

(8/2)5時朝食。快晴。今日3日目のルートについては、太郎小屋やスゴ乗越小屋の方々や話を交わした色々な人たち登山者の方々から、スゴ乗越小屋から越中沢岳のアップダウンが非常にきつく頂上が見えてもなかなか着かなくて苦しい、との情報をいただいた。5:55、ゴーゴーゴー!と気持ちを上げて出発。下りから始まる急坂はアップダウンが何度も何度も繰り返される。振り返ると見える薬師岳と北薬師岳に、長い長い尾根をここまで歩いてきたもんだ……と感慨に耽るも、まだまだ続くアップダウンに、ストックを出したりしまったりしながら、岩を登ったり下ったり。途中、手の支えとなるものが全くないザラ砂の坂では、短いハイマツを持って這うように移動。色んな人達から聞いていた「見えているのになかなか着かない」というジラされ感にも慣れて悟りの境地にすら達しそうになった時、え?着いたの?ほんとに?という感じで越中沢岳山頂に到達。私にとって越中沢岳は今回の4日縦走の大きなマイルストーンだったので、ずっと張りつめていた緊張が解け安堵が押し寄せる。見渡すと、360度パノラマの山頂からは晴天のもと北アルプスの山々が勢ぞろい。山頂で素晴らしい景色を堪能したあと、鳶山まではあとひと登りあるものの、トラバースが多く楽しく歩ける。そして鳶山から五色ケ原山荘への道は、立山・剱をバックに花畑・池塘・雪渓が美しく「これぞダイヤモンドを彩るオールスターやぁ~!」。ハクサンイチゲ(白)、ミヤマキンバイ(黄色)、ハクサンチドリ(紫)、ハクサンフウロ(ピンク)、オヤマソバ(赤)、ミヤマリンドウ(紫)、と、本当に色とりどりのかわいい花々の群集に、ウキウキと気持ちも歩調も軽くなる。五色ケ原山荘では針ノ木岳が目の前に広がる個室をいただきさらに大喜び。

(8/3)5時朝食。最終日はあいにくの曇りで周りの山々も見えないが、山荘の方から「昨日の天気がよすぎたんだから」と言われて納得。今日のコースには何か所か雪渓渡りがあり、7月末までは雪渓が凍っていて危ないとのことで山荘の方から軽アイゼン持参を薦められていたのだが、8月に入ってからの晴天続きで氷は解け、踏み後も切ってくださっているのでアイゼンは使わなくても大丈夫であろう、とのこと。5:55、今日もゴーゴーゴーと出発。獅子岳、ピークを巻いて通過の鬼岳と龍王岳、と今日もまたアップダウンが繰り返され、クサリ場や梯子、岩登りなどを楽しむ。全部で3つ渡ることとなった雪渓は、距離の長いものもあったが、どこも凍ってはおらず、アイゼンをつけなくても滑ることなく安全に渡りきることができた。途中、花々も咲き誇る。ハクサンチドリやミヤマリンドウに加え、トリカブトやアザミの蕾も出てくる。ずっと晴天が続いていた縦走だが、今日だけは、ダイヤモンドコースを包みこむガスが晴れることはなく、その白い世界は「スモーキーダイヤモンド」と命名された(コピーライト:T)。そして、ガスってくると出てきてくれるのが雷鳥たちで、あちこちに雛をつれたお母さん雷鳥が現れてくれた。車の音やバスのアナウンスが聞こえてくるにつれ、室堂に近づいていることを実感。室堂山展望台分岐に着くころには、少しずつ晴れ間が出てきて、立山や劔が見えてくる。そして、室堂バスターミナルにて、ついに4日間の縦走も終了。室堂バスターミナルからは美女平を経由して立山へもどり、グリーンビュー立山で日帰り温泉を使わせていただいてから、富山地方鉄道で富山に出て帰京した。

今回は、記念すべき、TさんのNHC100回目山行でした。Tさん、おめでとうございます!!また今回は、今まで山中2泊以上したことのない私にとっては初めての連泊縦走で、新参者・未熟者の私がこの山行を突破できたのは、LやSLの多大なるサポートがあってのことでした。どうもありがとうございました。天気にも恵まれ、思い出もたくさん、本当に素晴らしい経験になったこの山行でした。(Y)

<コースタイム>
(7/31)富山地方鉄道富山駅(/6:03)=有峰口駅(7:02/7:15)=折立バス停(8:05/8:25)-1869.9地点(10:10/10:20)-五光岩ベンチ(11:45/11:55)-太郎平小屋(12:45/泊)
(8/1)太郎平小屋(/6:25)-薬師平(7:30)-薬師岳山荘(8:20/8:35)薬師岳(9:50/10:35)-北薬師岳(11:35/11:45)-間山(13:15/13:25)-スゴ乗越小屋(14:30/泊)
(8/2)スゴ乗越小屋(/5:55)-越中沢岳(9:45/10:25)-鳶山(12:25/12:45)-五色ケ原山荘(13:35/泊)
(8/3)五色ケ原山荘(/5:55)-ザラ峠(6:35/6:45)-獅子岳(7:55/8:05)-一ノ越との分岐(10:00/10:15)-室堂バスターミナル(12:20/)

<参加者>3名