奥多摩駅からのバスは、無風で鏡状の水面に紅葉を写す奥多摩湖を周遊する。ドラム缶橋は壊れて通行止めの為、深山橋バス停で降り歩き始める。道路脇のコンクリ壁に、切れ間のように登山口が現れた。奥多摩三大急登の尾根歩きを満喫するイヨ山、ヌカザス山周遊が始まった。杉や赤松で視界を遮られる中、林業の作業道のような薄暗い急登が延々と続く。その昔、山越えで恋人に会いに通ったおつねさん伝説から、「ツネの泣坂」の異名をとる。「着物女子に毎晩会いに来させる男は何なのか」というクレームが噴出する程に険しいが、柔らかな落ち葉の道を踏みしめ先ずはイヨ山山頂に到着。小休止。その後も登り返しを含めて尾根を歩き、落葉した木陰から三頭山が覗き始め、「おつねさんは最後は別れたに違いない」という確信が芽生えるぐらいに続く急登を登り切ると、そこがヌカザス山頂である。その高みでランチ休憩。
通常はメインとされる三頭山をスルーする我々の今回のコースは、頂上直下いきなりロープで降りる急坂だった。おつねさんどころではない。逆に滑りやすくリスクとなった落ち葉に慎重に足を差し一人ずつロープを手繰る。このあたり100名山踏破者と入会初心者の差が著しい。その後はつづら折の登山道のおかげで何とか歩きやすい急坂の下りが続く。これで終われば尾根歩きの修行で終わったかもしれない。たまに現れる緩やかな平地で我に帰ると、午後の日差しを透かす紅葉が美しく、その合間から雲取山が、そして近づいてくる湖面が見える。針葉樹で紅葉するカラマツが色を添え、限りなく薄いタカノツメの葉の黄色が鮮やかに浮かぶ。窮地を乗り切り、ふと見る自然の美しさは山での大切な瞬間だろう。(ただ、油断して転ぶ者も出てくる) やがて舗装された道路が、オートバイや旧車愛好会の爆音が、山道からでも感じられるようになる。戻ってきた。チームリーダーの計画とペースメーカーの見事な呼吸で、ピタリと時間通りに予定した登山口に戻る。奥多摩駅に向かうバス停まではすぐそこだった。(N)
<コースタイム>JR奥多摩駅(/9:20)=深山橋BS(9:55/9:55)-登山口(10:25/10:35)-イヨ山(11:30/11:40)-ヌカザス山(12:40/13:00)-登山口(14:55/15:00)-陣屋BS(15:03/15:06)=JR奥多摩駅(15:45/)
<参加者>7名